事前確率はどこから来るのか? (Where do pretest probability come from?)

LR (likelihood ratio)やBayesの定理など臨床推論に絡む話をするとほぼ必発の質問

「そもそも最初の事前確率はどうやって知るのですか?」

至極妥当な質問である.

ある診断が問題になっているときにその診断に役に立つ症状や身体所見,検査値の異常があったり無かったりするとき,最終的なその診断の確率 posttest probailityはそれに対応するoddsの形で

pretest odds x LR+(A)x LR+(B)x LR-(C)x LR+(D)x LR-(E)x LR+(F) =posttest odds

(例えば症状A,Bはあるが症状Cがない,身体所見DはあるがEはなく,検査Fが陽性の場合)

として表されるLR+\-は全てその症状,所見,検査に固定された数字なので(本当は違うのだが),最も大事なのはpretest oddsの見積もり,つまりそれに対応するpretest probability(事前確率)の見積もりが最も重要である.その見積もりにが大幅に違うと,その後の問診,診察検査が適切であっても,事後確率は影響を受ける.しかしその方法については意外と書かれていない.

その質問に答える際にいつも引用している論文がこれ

Richardson WS: Where do pretest probabilities come from?
ACP Journal Club 1999, 4:68-69.

あいにく購読していないと読めないので骨子だけ抜粋

pretest probabilityの源となりうるものは4種類

1.Remembered cases
2.Practice database
3.Planned research
4.Population prevalance

1.医師の経験から.当然診療所でやっている医師にとっての発熱咽頭痛の最終診断の上位(大半は風邪)と,化学療法で白血球が下がっている患者さんばかり見ている血液腫瘍内科医にとっての発熱咽頭痛の最終診断の上位は違う,その領域で長くやっていればやるほど,「その領域,セッティング,状況」での様々な事前確率の見積もりは正確になるが,そのぶん,「領域,セッティング,状況」が変わると見積もりが外れる確率が高くなる.
また直近の経験によりバイアスを受ける(最近脳腫瘍による頭痛を診たとか,見事珍しい病気を診断したとか,自分の興味のある領域の疾患が高く見積もられるとか)
胸痛の患者において,循環器内科医は心臓疾患を,消化器内科医は消化器疾患をgeneralistの見積もりよりも上位に上げることは知られている.

2.自分の診療所が非常に整理整頓されていて,この様なことを意図して診療すると自動的にデータがたまるようにしていれば,(そうでなくても調べることが出来れば),自分の医療機関での事前確率はしっておくことができる.咽頭培養を出した全部の患者のうち溶連菌がどのぐらい陽性なのか.この数字が検査室や検査の外注会社に出してもらえれば,「この人は咽頭培養を出そう」と考えた人の溶連菌の事前確率そのものである.
それがわかっていて迅速キットの感度特異度がわかっていれば,事後確率の見積もりはたやすい.
電子カルテがあれば,そのようなデータ収集も容易になるだろう.

3. そのような事前確率を知るために計画されたリサーチは多いので,PubMedなどに当たることで,見事見つけられるかもしれない.また,必要なら,そのために自分の診療所で前向きに計画を立てるのも良いだろう.

4. 代表的な疾患なら,市町村や保健所が統計を取っている場合もある.また,国民衛生の動向等も使えるだろう.

ただし現在の所,医学生も,経験ある医師も事前確率の見積もりは不正確,ということになっているようです.

以下同じ著者による最近の論文(こちらは読めます.ほぼ同じような内容です)

W SCOTT RICHARDSON. Five Uneasy Pieces About Pre-test Probability. J Gen Intern Med. 2002 November; 17(11): 891–892.

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