家庭医療が絶滅するとしたら,その原因となる9つの理由

この文章は、2009年の第21回家庭医療学夏期セミナーの最終講演「家庭医療に未来はあるのか?」で話した内容の一部です。最近再読して、現在のこのタイミングで(総合診療医の制度化),再度共有することに意義があると考えられたので公開します。

本来は出典を記述すべきであるが、どうしても見つけられず(まだ学術的記述へのこだわりが甘かった時代です)、それでも共有する意義があると思われるのでご容赦。(どう考えても自分の頭から自然に出てくる日本語とは思えないので,何かの翻訳/翻案と思われる。出典がわかる方は教えていただけますとありがたいです)

注意)これはあくまで現状を記述した物ではなく、仮説である。

遠い(近い?)将来、家庭医療が存在しなくなるとすると、以下の9つのうちのどれか,またはそのうちの複数の組み合わせと思われる。そうならないように,前もって注意して世渡りをしましょう。

  1. 家庭医は優しすぎた or 戦わなかった
  2. 家庭医、家庭医療の定義ができなかった
  3. 逆に独立性にこだわりすぎた
  4. 振り分けと「算術」に徹しすぎた
  5. 学術的な成熟が不十分なまま停止した
  6. 新たな知識の創出ができなかった
  7. 主流にも「反主流」にもなれなかった
  8. 学生、研修医に希望が与えられなかった
  9. ばたばたしている間にお株を奪われた

では以下詳細を。

1. 家庭医は優しすぎた or 戦わなかった

摩擦をさけるために、他分野の言うがままに、領域をひとつずつ放棄、
もしくは、診療領域を他領域の医師に「定義して頂く」
終末期は緩和ケア専門医へ
新生児は新生児科へ
思春期は思春期専門医へ

糖尿病は糖尿病専門医へ
病棟はhospitalistへ, etc
残るのはいったい?

いい人たち,と良く言われますが,それだけでは。。

2. 家庭医、家庭医療の定義ができなかった

家庭医療、地域医療、総合診療、農村医療、僻地医療、プライマリ・ケアetc どう違う?
内科医や小児科医の次善策的 代替え医?(内科医や小児科医にかかれないからやむなく?)
言葉からイメージが一瞬にして想像できるものでなければ人々の記憶に残らない→やがて忘却へ

3. 逆に独立性にこだわりすぎた

大学や大病院の中での「独立性」「地位」にこだわり過ぎ、医療の質向上や、診療報酬制度改革への貢献を忘れたために、「特定の技術(手術や手技)」の提供に長けたそれぞれの分野に持っていかれた

4. 振り分けと「算術」に徹しすぎた

経営と効率を優先するあまり、「権限委譲」をやりすぎた
電話対応を看護師に
栄養指導を栄養士に
服薬指導を薬剤師にetc
ある朝目が覚めて「自分の仕事がなんだったか思い出せない」

5. 学術的な成熟が不十分なまま停止した

「家庭医療は自分の居場所を作ることではなく、精神論の構築を選んだ」by Gayle Stephens
そのため、多くの住民が遭遇する日常的な問題について「最高級」の医療を提供するための戦略の代わりに、家庭医療が本当のプライマリ・ケアであることを主張するための戦略を選んだ(例、質の高い家庭医よりも家庭医の数を優先した)
住民にとってより良い結果を生むことになる多くの分野(公衆衛生、メンタルヘルス、遺伝子学、宇宙工学、コンピュータ、etc)と手を組む代わりに、過去の過ちや敵対を蒸し返してばかりいた
つまり家庭医療は精神的に思春期のまま止まって、成熟できなかった
“Family medicine never filled an empty space in the hearts of people” by Gayle Stephens *

6. 新たな知識の創出ができなかった

住民の医療ニーズを満たすことではなく、学問にこだわったため、家庭医から提供されるケアが向上せずその存続には裏目に出た
常に世の中を変える新たな知見は他の分野から出たため、家庭医の活動は顧みられることはなかった
それは家庭医が「重要でない」リサーチクエスチョンしか選ばなかったから
そして根拠のない主張だけが無意味に響く

7. 主流にも「反主流」にもなれなかった

専門家ではなく「二流」としてしか認識されなかった
主流になれないことで診療報酬が十分に支払われることがなく、「信念」だけでは食べていけなかった
「何かしらへの」特化をすることなく、流れに乗ってカメレオンを演じることを選んだ
大病院で、大学で、メディアで、政策提言でもっとプライマリケアの重要性について、発言を効果的にすればよかったと後悔だけが残った。

注)愛の反対は憎しみではなく無関心、という言葉があります。批判すらされない,というのが最も問題なのでしょう。

8. 学生、研修医に希望が与えられなかった

生涯給与の格差
大学内での地位
キャリアパスの不透明さ
社会的地位

9. ばたばたしている間にお株を奪われた

NP(Nurse Practitioner: 診療看護師)が同じ仕事を安く提供でき、しかも医師と対等であろうとしなかったため、臓器専門医が家庭医とパートナーを組む代わりに、こぞってNPを雇用、それぞれの臓器専門医の診療所でNPによるプライマリケアと専門医療の両方を提供し始めた

注)NPを敵対視している訳ではなく、家庭医にとっても重要なパートナーになり得ると考えていますが、注意は必要と思います。

*L.Green. Fam Med. 2001;33(4):320-4.  

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