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>温故知新 Textbook of Family Medicine 第3版 by I. McWhinney & T. Freeman

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教科書には2種類ある。その領域に必要な知識をカバーするためのもの、そして、その領域を定義して、概念化するためのもの。この本は後者に属する一冊である。臨床領域の教科書のほとんどは疾患を分類する伝統的な方法にあわせて書かれているが、家庭医療の教科書がそのような構造をとろうとすると2つの問題に直面する。家庭医は問題が分類されるよりも前に問題に遭遇する(診断がはっきりしない)。原則的に家庭医はあらゆる種類の問題に対処をする準備ができている(もちろん適切な紹介も含めて:岡田注)。つまりどれほどまれであっても、家庭医療の現場で出会う可能性のない疾患など存在しない。もし教科書がその領域にわたる全ての知識をカバーしようとすると、内科の教科書の焼き直しになってしまうリスクを抱える。さらに深刻なことに、時に家庭医療でも使用されることはあるが、基本的には、従来の構造(おそらくbiomedical model;岡田注)は我々の領域において非常に自然である有機的な思考体系(おそらくbiopsychosocial modelを代表とするシステム理論など:岡田注)とは矛盾しているという意味において、家庭医療はその他の分野から異なっているのだ。(翻訳岡田)

総論屋、理屈派、原理原則論重視人間の私としては、歴史をよく学んでそこから生かせることがないかいつも考えたり、Classic(古典)に立ち返ることを重視しています。(というか好きなだけなのですが)

香港でのWONCA に参加したことの収穫の一つにPatient-centered Medicine: Transforming the Clinical Method: Transforming the Clinical Method(下記:以下PCCM本)の著者であるMoira Stewartの講演を聴き、個人的にお話しできたことがあります。そのスクープは追ってお話しするとして、そこでPCCM本の第3版の話がでていること、また家庭医療の古典の一つであるマクウィニーの教科書が改訂になったばかり、という話を聞きました。

早速購入。昨日届きました。また私としては、最初にPreface(前書き)なぞを通読してしまうのです。(意味のない作業ではなく、特にそれまでの版を読んでいる場合、どこが改訂になったかをまず知る方が効率がよいからです。ガイドラインの改訂と同じです)

そのprefaceの最初の段落を最初に挙げましたが、(英語だとかなり格調高い文体なのですが…) 家庭医療の本質をよく表しています。

同様のラインでは廣岡 伸隆氏の投稿が参考になります。
廣岡 伸隆 Family Practice 概論 より良い理解のためのイントロダクション ―米国Family Practice Residency の経験から―
家庭医療11巻1号 2004 pp.66-71

つまり、家庭医療は医学、生理学、社会学、心理学などなどの多くの学問から得られた知見をもとにしてそれを適切な場面で適切に組み合わせて実践する2次学問であるということ。

その他の第3版の変更点としては初めてThomas Freeman氏を共著者にして、単著ではなくなったこと、McWhinney氏とFreeman氏が二人で第2版の抄読会を進める中で時代遅れになっている部分や改訂が必要な部分を変更したことなどが書かれています。

五つだけ臨床問題に関する章(咽頭痛、頭痛、疲労、糖尿病、高血圧)が用意されていますが、その意図については以下のように書かれています、

前述の通り、家庭医療という領域がカバーする全ての知識を網羅することはできないこと。疾患の分類にあわせて教科書を構成するという行為自体が、家庭医療のものの見方に相反するということなどから、あくまで、1−10章にかかれた家庭医療の基本的原理の実践例や実践方法を例示するためのものである。(岡田意訳)

一応具体的な治療方針などについては執筆時の最新のカナダのガイドラインなどにあわせていますが、時間とともにそれは古いものとなるため、その都度最新の情報を参考にする必要があること、特に薬物療法に関しては、今の時代、どの教科書でさえも、適切な情報源とは言えないため、特に理由がなければ具体的な投薬のレジメ(dosage)については意図的に言及しない、ことが書いてあります。

ではなぜあえて臨床のトピックを扱う章を用意するのか。
前述の「あくまで、1−10章にかかれた家庭医療の基本的原理の実践例や実践方法を例示するためのものである。」が全てを語っていますが、その5つについてはprefaceで症状3つと古典的な疾患概念である糖尿病、生理学的な多様性と危険因子についての高血圧という風に説明されていますが、具体的にそれらの章を眺めてみると

急性咽頭痛では、いわゆる検査前確率などの診断精度の問題、家族の影響、見逃してはならない診断(もちろん急性喉頭蓋炎)など診断の周辺と費用対効果に乗っ取ったマネジメント(全員治療vs検査で治療vs etc)
頭痛では鑑別診断、自然経過でなおることの多い疾患のマネジメント、見逃してはならない診断、急性期の治療、予防、慢性化した頭痛の治療)
疲労では心身相関や精神疾患の症状としての身体症状、鬱病、慢性疲労症候群
高血圧では、疫学、人種や年齢その他の危険因子毎の発生率の違い、診療所のシステムとして未診断の高血圧を見つけるシステムの構築、薬物治療へ踏み切るタイミングなど
糖尿病では一般的な慢性疾患の管理(合併症予防まで含めて)

と言った具合である。ただしそのbiomedicalなマネジメントの内容は場合によっては他の書籍の方が優れた内容を提供していると思われる場合も多く、prefaceにあるように、そのトピックの診断、治療について学ぶというよりは、その例を通じて、家庭医療の理念に基づいた疾患のスクリーニング、診断、治療、管理、家族との関わりなどの表現方法を学ぶことに徹する方がよいだろう。

Part 3は家庭医療の実践、ということで、往診、記録(電子カルテも含めて)、紹介、コメディカル、地域資源の利用、代替相補医療(CAM)、診療所運営の章立てで、この部分が特に最近の進歩にあわせて大幅の改訂がなされたようである。

Part 4は生涯学習とリサーチ。

まとめるとやはりprefaceの第1文にあるようにこの教科書は家庭医療を定義して、概念化するための教科書であり、その理論的基盤はやはり現代でも通用するclassic(古典)としてその位置は揺るがない。最も価値のあるのはPart I(基本原理)の1−10章。ただ残りのpart2~4は一部参考になる部分があるものの、よりよい内容を得られる類書も多く、個人的にはむしろない方がこの教科書の価値を高めるのではないかとまで感じられる。

家庭医療の教科書をひもとく楽しみはその「総論」「基本的理念」にある。それぞれの著者がそれぞれの「家庭医療観」に基づいて章立てと構成、理論展開を行うため、その著者の「家庭医療観」がよくわかるからであり、それはさらにいくつかの教科書を比較することでよくわかる。

米国のSaultzやSouth-Paulのものと比較すると、米国のそれは非常にダイナミックであり、いわゆるcutting-edge(変化しつつある最先端)を明確に意識し、できる限り適応しようとする意図が見える一方で、McWhinnyのそれは、英国圏の影響であろうか、徹底的に基本的原理を守ることが重要であり、時代の変化に対しては必要だから対応する、というような半ば受け身の雰囲気も感じられる。

私自身はどちらの肩を持つでもなく、その差異そのものの存在を喜びたいと思う。McWhinnyの弁護をしておくと、その第1章のごく早い段階(p6)において、医学の高度専門分化の歴史を語った後に、考えなければならない2つの教訓として

1. もし専門家(profession)がパブリックのニードを満たすことができなければ社会は自らのニードを満たすために何らかの方法を見つけ出す、場合によってはその専門家集団の外にいる人たちに解決を求めて。(例えば代替相補医療もその一例かもしれない)。
2. professionは時には、社会からの圧力に対応する形でそのメンバーの主張する方針や意図に反する方向で進化することがある。

を挙げていることを指摘しておきたい。

なんだかんだといいながら書評を書いてしまいました。
これから少しずつ熟読を進めていきます。

Textbook of Family Medicine
Ian R. McWhinney, Thomas Freeman
Oxford University Press, USA ( 2009-04-08 )
ISBN: 9780195369854
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

Moira Stewart, Judith Belle Brown, W. Wayne Weston, Mcwhinney, McWilliam
Radcliffe Medical Press ( 2003-07 )
ISBN: 9781857759815

CURRENT Diagnosis & Treatment in Family Medicine Second Edition (LANGE CURRENT Series)
Jeannette South-Paul, Samuel Matheny, Evelyn Lewis
McGraw-Hill Medical ( 2007-09-04 )
ISBN: 9780071461535

モチベーションをあげる方法(自分、他人)

引き続き、いろいろな人に「やせましたね」といわれますが、最近はその後に「大丈夫ですか?」が続くことがしばしば。病的なやせ方に見えるのでしょうか。体調は変わらないのですが、病的に受け取られるやせ方なら改めなければなりません。もう少し体重戻した方がいいのかな。あと今は食事管理だけなので、やはりもう少し運動を取り入れて健康的にやせなければと思っていますが、食事管理は時間も労力も意識付けもいらない(今は完全に習慣化されてしまった)ので苦痛もないし、努力も不要なのですが、運動に関してはまだその域に達していません。

さて、最近ずっと自分のテーマである、「やる気」。

引用ばかりですが、

昨年のHANDSで参考書にした

モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則 (PHPビジネス新書)

の著者の連載です。(全部無料でみれると思います。表現は違いますが上記の本の内容の多くがカバーされています)

自分用
モチベーションを創る技術http://business.nikkeibp.co.jp/article/nba/20080326/151295/
全24回

他人用
モチベーションを高めるリーダーシップ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nba/20080917/170817/
21回 連載中

自分自身の身につまされることも多いですが、再認識しながら日々向上を目指すよりありません。

関連してもう一冊。こちらは大学教授の執筆によりきちんと論文を引いてあり、いわゆる総説として良くまとまっています。ですから少し読み物としては硬いですが。

その他のやる気関連本はこちら

時間泥棒されないように気をつけながら参考まで。