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日本初!かかりつけ医を探すガイド 日本の家庭医1435人

表題のタイトルで,AERAの増刊号が本日付で発刊となった.

本誌でも何度か連載をされた特集であるが,そこから大幅に情報を追加した形である.

日本初!かかりつけ医を探すガイド  日本の家庭医1435人
定価:680円(税込) 発売日:2008年6月23日 A4変判 228ページ アエラ臨時増刊(2008/07/05)

嬉しいことに,名前を載せて頂いた.他者の評価は関係ないといいつつも小市民の私は,家庭医を名乗る立場として,やはり推薦がもらえたことはうれしい(またほっとした)

だいぶ前に,診療科目などの聞き取り調査があったので,推薦があったことは知っていた(推薦がないと載せてもらえない)が,誰からの推薦かは発刊まで教えてもらえなかった.なので,ずっと,誰の推薦なのか想像を巡らせていた.

今日妻に慌てて買ってきてもらって,本誌を手に,ようやく,本の趣旨などがわかった.
誰が推薦をしたか:地域中核病院の院長や,診療科長,大学の教授など
私を推薦してくれた人,本院の主要な立場にある人3名.

ずっと誰が想像してくれたのかを考えていた都合,正直少しがっかりした.誰が紹介をするのかも知らなかったので,同業者(家庭医)が紹介してくれるのだと思っていたから.まったく事前のやりとりはなかったにせよ,見る人によってはやらせや,内輪と取られても仕方ないから.

しかし本当の意味で,我々の仕事の中身を知った上で推薦できるのは,
1)同業の家庭医ではない.グループ診療で同じ診療所やグループでやらない限りお互いの診療録を見ることすらないのだから.多くの家庭医を友人,知り合いに持ち,学会や,ワークショップで共に仕事をするが,医師としての彼らの仕事ぶりや診療録を見たことはない.普段のやりとりから,人柄とコミュニケーション能力はわかるので,そこから,「患者さんと接するときはこうなのかな」と想像をするしかない.診療の医学的なレベル,質についてはわからないとしかいえない.
診察室の中と外で人が変わる医師もいますから ...

2)患者さんが家庭医の質を見極められるか. yesでありno. 家庭医は自ら名乗るのではなく,患者さんに「私の家庭医」と呼んでもらって初めて家庭医という言葉がある.医療は患者さんに評価されなければという意味ではyes.しかし,医療の質はそれなりでも,人当たりのいい医師が非常に受けるということはある.また,その地域での医師と住民の需給バランスで医師の相対的に少ないところは受診者数が多い.だから,受診者数のランキングで質の指標とは出来ない.また「この医師はすばらしい」と例えば5段階評価の最高ランクをつけた患者の多い医院ということでも,母集団が多ければそれだけ,多くの評価は得られる可能性があるのでダメ.あり得るとすれば,受診者数を分母として,最高ランクをつける患者の割合.これなら,一つの患者の視点からの家庭医の質として成立し得る.
しかし,医学的に細かいことのわからない一般の方々に医療レベルの細かい違いは見分けられない.

(これは一般的にどの分野でも,中にいる人たちがこだわっているほどの,また気づけるほどの小さな差異は外部のものにはたいしたことはない,また見えないことが多い,といわれている.車の整備の腕の違いがわかる人がどのぐらいいるだろう)

3)ということで,家庭医の医学的な質について最もよく見ることの出来る立場にある人たちが,紹介状のやりとりをする,中核病院や臓器疾患専門医なのだ.紹介状の記載内容やそのタイミングそして,家庭医が診ていた患者さんを引き受けて診療する場合は,直接患者さんからのその家庭医の評価も得ることがあり,一般の人からの評価も,医学的な評価も下す事が出来る.

そういう意味で,本当の意味で医学的内容も患者さんの評判も含めて評価できるのはその家庭医の診療圏で頻繁にやりとりをしている中核病院の医師,当然知り合い,ということになる.内輪といわれても,そうするしかないかもしれないのである.

ただこのやり方には,大きな問題が残る.中核病院が近くにない家庭医,また,本当に力のある家庭医で,大きな病気は全て未然に防いでしまい,完全にその家庭医のところで医療が完結してしまう場合.中核病院との患者や紹介のやりとりは起きないので,そこでどのような医療が行われているかについては,良くも悪くも見えないのである.(推薦に値するかどうかを判断する情報すら得られない)

「何でも全て診る」を地で行く,本当のスーパー家庭医であればあるほど,この方法では推薦されないというジレンマが起きる.

また,家庭医療もれっきとした専門分野,循環器の医師が泌尿器の医師の質を評価できるか,というのと同じ問題は起こる.これも一部yes一部noであろう.

ということで,最初は無理と書いたが,最近はやりの「有名料理人が通うレストラン」といった本のように,「家庭医自身が通う家庭医」というのが一番正しい評価になるのではないかと思う.勿論距離の問題があり,「実際にかかっている」事を前提にすると,首都圏の医師が上位に挙がることになるのだが.一方で,「家庭医自身が通いたい家庭医」とすると,1)と同じ事になり,必ずしも医療の質を見ていない事になる.

そうすると,地理的な問題がないとしたら自分が家庭医としてかかりたいのは…..と考えたときに,いろいろな人の顔が思い浮かぶ.でもそれは前述の1)に過ぎない.普段の医師患者関係ではないつきあいからの想像でしかない.

やっぱりかかってみなければわからない.

これが家庭医の善し悪しを見分ける本当の方法.ガイドはガイドでしかない.家庭医の質の担保と主張のため,チェックリストや質の判断基準を作る必要はある(絶対に).しかし,それは必要条件であり,十分条件ではない.

なんだか月並みな結論になってしまった.

ざっと本を眺めると
自分以外に25人のよく知った人たちの名前が並ぶ,そして,推薦者の名前も「さもありなん」.しかし,(その診療は見たことないが,想像するに)もっと,そこに名前が並んでしかるべき何倍もの数の家庭医を知っている.そしてその人達は3)で書いたような「本当のスーパー家庭医」だから名前が挙がらなかっただけなのかもしれない.

医療の質の評価は本当に難しい.

本に関して.
途中で,膝の名医が出てきたり,後半で内視鏡の名医のリストがあったり,最後には医療機関の広告がいっぱいあったりで編集の一貫性や,評価の中立性に非常に頭をかしげたくなる部分も多い.また,「家庭医療」という標榜が出来ない以上,その包括性を表すために多くの標榜を挙げているところもあるのだが,リスト掲載の際に「主要3科」と限定されてしまっているのが残念.

個人的に,大事だと考えて取り組んでいる生活習慣病に大きく関わる内分泌内科の部長の推薦は意外でもあり,大変嬉しかった.そして,院長の推薦文は本当に私の仕事をよく見ている事が伝わる文章.リーダーの鏡.

推薦に恥じないようにまた頑張るしかないなという結論になりました.(またハードルがあがってしまった...)

医療の質の評価は本当に難しい.

家庭医に必要な手技,手技の能力の評価と記録,hospitalistに必要な能力

STFMの年次総会より戻った.沢山の旧交を温め,多くの宿題とアイデアを抱えて.
発表の一部は既に共同の知識源に蓄積されつつある.FMDRL.org

多くの人のサポートを得て行ったので,こういう形で少しずつ還元しなければと思うがなかなか目の前の問題が片づかない.

奈義ファミリークリニックの松下先生とのコラボについては後ほど.

表題の件について.
2000年より10年計画で米国のレジデンシーすべてに義務化されたACGME outcome projectはようやくそれなりの成果を見せつつある.
そもそもToo Err is HumanというIOMの報告から始まった医療の質への意識向上は,「莫大な金と時間をかけて医師を育てているはずなのに何で医療の質が悪いの?卒前教育,卒後教育ちゃんとやっているの?」というpublicの当然の疑問に答え,保証する為の方法として卒後教育はoutcomes projectとなった.
要は「XX年 OO科の研修したから終了,その科の専門医」というのをやめて,安全に独り立ちできるレベルになったら(その道のエクスパートになったらではない)研修修了としましょう.そのために,それぞれの研修プログラムは修了生が安全に独り立ちできるような教育をしていることを証拠として出しなさい.というproject.

それまでhigh qualityの研修をやっているところはその明文化をすればいいだけのこと.そうでないところは,そうできるようにプログラムを変えていかないと卒後研修としてお墨付きがもらえないということ. 質の保証と向上.

印象として感じたのは,3年間家庭医の研修をして,その成果を慌ててかき集めることは無理なので,その都度,出来るだけ負担の少ない方法で,こまめに,その記録をためていきましょう.という流れ.(case log, procedure log, precepting log, portofolio)
そして,それをやっていくことが,結局自分のプログラムの修了生の品質証明(高い商品やペットに通し番号がついていたり,血統書がついていたり,認定マークが付いていたりするのと同じ)になり,それを分野全体でやることで家庭医療,家庭医の品質証明,アピールになるということ.

わかりやすく手っ取り早いものとしては手技がある.

STFM のgroup on Hospital Medicine and Procedural Trainingの発表で,最近発表になったconsensus statementの経緯とこれからについて聞いてきた.

論文はこれ

Required Procedural Training in Family Medicine Residency: A Consensus Statement

Melissa Nothnagle, Julia M. Sicilia, Stuart Forman, Jeremy Fish, William Ellert, Roberta Gebhard, Barbara F. Kelly, John L. Pfenninger, Michael Tuggy, Wm. MacMillan Rodney, STFM Group on Hospital Medicine and Procedural Training

(Fam Med 2008;40(4):248-52.)

領域毎に,core procedures for family medicineとして
A,B,Cにランキング AをA0-A2に細分化 (table 1)

A:すべての家庭医療研修プログラムがこの領域の手技の研修を提供する必要がある
A0:このレベルは,すべてのレジデントが医学部修了,もしくはレジデンシーの途中で出来るようにならなければならない,研修の証明や数の記録は不要
A1:全てのレジデントがこのレベルの手技が卒業までには独立して出来るようにならなければならない
A2:全てのレジデントがこのレベルの手技にふれ,卒業までには独立して出来るようになるための研修する機会を得られる必要がある.(必ずしも出来るようにならなくても良い)
B:このレベルは家庭医療の範囲内であるが,独立して出来るようになるためには数多く,集中した研修をする必要が生じうるもの
C: このレベルは家庭医療の範囲内であるが,独立して出来るようになるためには3年を修了後追加の研修が必要になり得るもの

例えば皮膚であれば
A0 瞬間接着剤での裂傷の修復
A1 単純な裂傷の縫合
A2 電気メスの使用
B ボツリヌス毒素
C 該当なし
といった感じ
麻酔ならCに硬膜外が入る

全ての表は論文でみられるの参考に.

どのようにconsensusを形成したかの基準となるのが
table 2

1.患者にとってより利益があるか.家庭医が提供することでその手技へのアクセスが格段に良くなるか.救命に貢献するか
2.その手技を教えるのに十分な指導医がいるか
3.十分な数の家庭医が(修了後も)その手技を実施しているか
4.症例が十分にあるか
5.経済的に妥当か.診療報酬は適切か,導入に必要な初期コストが安価か

非常に納得.

我々のプログラムは早速これをたたき台にリストを作ることにしました(手技の達成確認はやらないと,と半年前からスタッフの間で話題になっていたので,良いきっかけとなりました)

記録,報告の方法(logging)についてはやはり今回参加したセッションを参考に

「そのときに出来ない記録は,後では出来ない」ということで,すぐに出来ることを優先.

REDI – Real-time Evaluation of Doctor’s Independence

このシステムを参考にとりあえず走り出してみることに.

最後に参考まで(特に総合診療の皆様へ).hospitalist movementに乗って,Society of Hospital Medicineがブースを出しており,そこで知ったのが,

The Core Competencies in Hospital Medicine

というリスト.オンラインでもみられます.

Section1: clinical conditions
Section2: Procedures
Section3: Healthcare systems
と分類されており,最後の所には

Care of the Elderly Patient 3.1
Care of Vulnerable Populations 3.2
Communication 3.3
Diagnostic Decision Making 3.4
Drug Safety, Pharmacoeconomics and Pharmacoepidemiology 3.5
Equitable Allocation of Resources 3.6
Evidence Based Medicine 3.7
Hospitalist as Consultant 3.8
Hospitalist as Teacher 3.9
Information Management 3.10
Leadership 3.11
Management Practices 3.12
Nutrition and the Hospitalized Patient 3.13
Palliative Care 3.14
Patient Education 3.15
Patient Handoff 3.16
Patient Safety 3.17
Practice Based Learning and Improvement 3.18
Prevention of Healthcare Associated Infections and Antimicrobial Resistance 3.19
Professionalism and Medical Ethics 3.20
Quality Improvement 3.21
Risk Management 3.22
Team Approach and Multidisciplinary Care 3.23
Transitions of Care 3.24

といった項目があるのが非常にバランスの取れたリストだな,と思いました.