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インパクトファクターと読者数(academic value vs fidelity)

書き始めると際限がなくなって,公開できなくなるので,とりあえず.
関連医学雑誌についてのimpact factorをまとめた.

ここ

なぜこんなことを調べているかというと,どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)ということを考えているから.これが「どこに発表するのが大学で評価されるか,academic rank のpromotionに効果的か」という質問になると間違いなくimpact factorの高い雑誌という答えであることに疑いの余地はない.ところが,私が興味があるのはそうではなく,

どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)

ということであり,多くの論文が実際には診療の現場に影響を及ぼしていない,いわゆるエビデンスー診療ギャップが存在しているため,(fidelityという言葉で下記の論文に詳しく記されている)academic journalへの発表が本当に診療の中身を変えるのに効果的かと疑問を抱かざるを得ない.実際,academic journalを読んで,自分の診療を変えた経験,頻度はどのぐらいであろうか.

Woolf et al.The Break-Even Point: When Medical Advances Are Less Important Than Improving the Fidelity With Which They Are Delivered . Annals of Family Medicine 3:545-552 (2005)

では,その代替え案としてどのような発表手段をどのような基準について選ぶかについて,readership(読者数,leadershipと間違えないよう)を基準にすることを模索する必要があると感じている.

医学雑誌読者数

これをみてみると,日経メディカルが圧倒的な発行部数であることがわかる.もちろん読者数,という点では有名タレントのブログには及ばないが.
しかしここでも,fidelityの問題がつきまとう.発行された雑誌のうちどのぐらいが実際に読まれているのか,そのうちどのぐらいの診療家が自分の診療をその結果変更するのか.何となく,個人的にはacademic journalよりも日系メディカルの方が実際に読んだものが役に立つ割合が高いようなが気がする.
ここは研究が必要なところ(すでにあるのかもしれないが)

このことは大学人やacademicianにはけしからん問題かもしれない.しかしacademic journalといわゆるthrow away journal(アメリカでは,スポンサーの広告がいっぱい入った,読み物的な医学雑誌を,軽蔑を込めてこのように呼ぶ.academic journalは本棚に保管されるが,日○メディ○ルなどは読んだら捨てられるため)の取り扱う内容には多少方針の違いがあり,どちらがよいということではない.(もちろんきちんと吟味されて書かれた,という前提がつくが)

まず,学者としての活動には大きく4種類ある.以下のページを参考にされたい.
1.The scholarship of discovery(発見)
2.The scholarship of integration(統合)
3.The scholarship of application/practice(適用、実践)
4.The scholarship of teaching(教育)

4種類のscholarship

今でも多くの大学人がそう考えていると思われるが,いわゆる学者(大学人)の仕事は1.という定義.その定義に基づけばimpact factorの高い雑誌に採用される研究をすることが学者のとしての価値である,ということになる.

私がこだわるのは,現場がどう変わるか,多くの知識の集積であるガイドラインや質の高いエビデンスのどれだけ多くを実際に患者さんに届けることができるか.現場でのfidelityの向上であり,質改善なのである.これは研究とCQI(continuous quality improvement)活動の目指すところの違いである.高血圧の治療をたとえにすると

研究:血圧を下げると健康寿命が延びる,という普遍的事実を発見,証明すること
QI:証明された普遍的事実がきっちりとできるだけ多くの患者さんに届けられるように工夫,実践の活動をすること.

実際に高血圧と病名がついた患者さんの多くは,管理目標まで血圧が下がると長生きできる,というほぼ普遍的事実があるにもかかわらずその利益の享受ができていない(管理目標まで下がっていない).このギャップには多くの障害があるとされているが(今回は省略),そのギャップを取り除く作業をQIと呼び,また別の視点からは教育とよぶ.

従来は,狭義の1の活動のみが学術活動と考えられてきたが,たくさん世の中に出る論文をわかりやすくまとめること(統合.質の高いreviewをわかりやすくまとめること),現場で体系的に質の向上に努めること(適用、実践),患者さんに,他の医療者に,研修医,医学生にわかりやすく伝えること(教育)もすべて学術的活動とかんがえられている.しかし,それぞれ,体系的であったり,計画的であったり,その効果が測定されている必要があるなど,学問として認められるには少しの縛りはある.
ただ,白い巨塔にいなくても学者として学問はできるということは間違いない.

最終的にもう一つ重要な条件がある.OHSU(オレゴン健康科学大学)の家庭医J.SaultzとS.Fields氏がいっていたことだが,「学術的活動はdissemminationをもって初めて学術的活動となる.」つまり,どれだけすばらしい活動をやっていてもそのことが世界に知らされなければ学問としての価値はないということ.「知識は人から人へ伝えられるまで何の価値も持たない」という動的知識論と整合性をなしている.つまり発表,論文.ということ.私が一番苦手なことだ.

そしてdissemminationにはwebがもっともよい.フューチャリスト宣言の梅田望夫氏の言葉を借りるまでもなく,もっとも多くの人の目にさらされる可能性を秘めているのだから.

さて,impact factorの高い雑誌での発表か,読者数の多い雑誌やメディア,またはwebでの発表か.どれが世界を効果的に変えるのだろう.新たな発見はimpact factorの高い雑誌での発表,それ以外は,うまく媒体を選んで,ということになるのだろう.

現場の臨床家は,自分たちがよいと信じてやっている様々な活動,工夫の効果測定と発表をもっと.
大学人は,純粋な知識の発見以外の学術活動(2.3.4)に対しての大学での正当な価値評価のための認識とその仕組み作りを.

P.S.現場で研究ができないわけでもしてはいけないわけでもない.現場にしか研究の種は転がっていない.しかし,圧倒的に資源が足りない.大学と現場の協働が不可欠である.

impact factorについては,下記の書籍がもっともよくまとまっている.なぜ学術集会の抄録が(suppliment:付録)なのかなども,そして,impact factorが全てではないこともわかる.

インパクトファクターを解き明かす
  • 発売元: 情報科学技術協会
  • 発売日: 2004/03
  • 売上ランキング: 1039447

>ライセンス, 著作権, fidelity, 情報の有用性,学究活動, creative commons, クリエイティブ・コモンズ

>IT環境の変化、Web 2.0時代への突入、学問的価値とは何か、講演, ワークショップ活動で、講演の録画しても良いか尋ねられる、今まであちこちのWSで配付された自分の作成した資料が、自分の名前が引用されることなしに別の勉強会の資料に使用される、などさまざまな経験のなかで、

1.自分の仕事ができるだけ多くの人に利用されること、多くの人の役に立つこと
2. 自分の仕事が世間に認められること、認知されること

は、ほおっておくと、必ずしも両立しない事に気づいた。自分は最終的に1.が達成されれば、無冠出会ってもいいと思っているが、両立させられるならしたい。
このようなことは当然世界中の人たちが考えていることで、

その仕組みをととのえることで、1.2.の両立を目指すインフラを提供するのが
creative commonsである。
http://www.creativecommons.jp/

私がscribdおよびdocumeで公開したEBM worksheetを参照して欲しい。
http://z.la/jmwzb
http://docune.jp/doc/490

共に、

Creative Commons License

というマークが付けられている。
この意味は
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
に説明されているが、creative commonsで定義されたライセンスに関する種類は以下の通りである。
(scribd, docume, creative commondsより引用)

パブリックドメイン   Public Domain Public_domain
表示          Attribution Attribution
表示-非営利        Attribution Non-commercial Attribution_noncommercial
表示-非営利-改変禁止   Attribution Non-commercial No-derivs Attribution_noncommercial_noderivatives
表示-非営利-継承     Attribution Non-commercial Share Alike Attribution_noncommercial_share
表示-継承         Attribution Share Alike Attribution_share
表示-改変禁止       Attribution No Derivatives Attribution_noderivatives
コピーライト      Traditional Copyright: All rights reserved Traditional_copyright

そしてそれぞれのマークの意味は

表示  Attribution :作者を明示しなければならない
非営利  Non-commercial:営利目的には使用できない
継承  Share Alike:利用したら同じ条件でライセンスをつけなければならない
改変禁止 No Derivatives:改変をしてはならない

である。

自分の基本的スタンスは、

表示-非営利-継承     Attribution Non-commercial Share Alike Attribution_noncommercial_share

でいこうと考えている。

なぜなら、

他の人はどうか分からないが、自分の作品で本当の意味でのoriginalと呼べるものはほとんどなく、すべて、それまでの先人の仕事や、いろいろな人とのやり取りの中で生まれたものであり、それらのinputなしにはできなかったと思われる。

であるから、自分の仕事もそのように、他の人に刺激を与えることで、自分の想像しないようなproductが出てくるきっかけとなりうること

を期待して、できるだけ広くの人に、自由に改変する自由を提供し(自分がそうされた、そうしたように)、提供した側も、された側も、予期しないようなすごい仕事が生まれることを期待するからで(改変禁止/no Derivativesはつけない)、そのためには、

自分の仕事に刺激を受けて他の人が作成した作品も、同じ信念によって、他の人に同様の条件で提供されることを義務づける必要がある(継承  Share Alike)

ただ、その大きな流れ、協働作業に自分は小さな一滴を貢献したことは、引用として残して欲しい(
表示  Attribution)
ということである。

最近以下の2冊に大きな、大きな影響を受けこんな考えになっている。

真の学究活動 scholaristic workとは何かについては、改めてまとめたいと思っています。
http://z.la/6ouwh

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
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  • レーベル: 筑摩書房
  • スタジオ: 筑摩書房
  • メーカー: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 777
  • 発売日: 2006/02/07
  • 売上ランキング: 208
  • おすすめ度 4.5
フューチャリスト宣言 (ちくま新書 656)
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