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家庭医に必要な手技,手技の能力の評価と記録,hospitalistに必要な能力

STFMの年次総会より戻った.沢山の旧交を温め,多くの宿題とアイデアを抱えて.
発表の一部は既に共同の知識源に蓄積されつつある.FMDRL.org

多くの人のサポートを得て行ったので,こういう形で少しずつ還元しなければと思うがなかなか目の前の問題が片づかない.

奈義ファミリークリニックの松下先生とのコラボについては後ほど.

表題の件について.
2000年より10年計画で米国のレジデンシーすべてに義務化されたACGME outcome projectはようやくそれなりの成果を見せつつある.
そもそもToo Err is HumanというIOMの報告から始まった医療の質への意識向上は,「莫大な金と時間をかけて医師を育てているはずなのに何で医療の質が悪いの?卒前教育,卒後教育ちゃんとやっているの?」というpublicの当然の疑問に答え,保証する為の方法として卒後教育はoutcomes projectとなった.
要は「XX年 OO科の研修したから終了,その科の専門医」というのをやめて,安全に独り立ちできるレベルになったら(その道のエクスパートになったらではない)研修修了としましょう.そのために,それぞれの研修プログラムは修了生が安全に独り立ちできるような教育をしていることを証拠として出しなさい.というproject.

それまでhigh qualityの研修をやっているところはその明文化をすればいいだけのこと.そうでないところは,そうできるようにプログラムを変えていかないと卒後研修としてお墨付きがもらえないということ. 質の保証と向上.

印象として感じたのは,3年間家庭医の研修をして,その成果を慌ててかき集めることは無理なので,その都度,出来るだけ負担の少ない方法で,こまめに,その記録をためていきましょう.という流れ.(case log, procedure log, precepting log, portofolio)
そして,それをやっていくことが,結局自分のプログラムの修了生の品質証明(高い商品やペットに通し番号がついていたり,血統書がついていたり,認定マークが付いていたりするのと同じ)になり,それを分野全体でやることで家庭医療,家庭医の品質証明,アピールになるということ.

わかりやすく手っ取り早いものとしては手技がある.

STFM のgroup on Hospital Medicine and Procedural Trainingの発表で,最近発表になったconsensus statementの経緯とこれからについて聞いてきた.

論文はこれ

Required Procedural Training in Family Medicine Residency: A Consensus Statement

Melissa Nothnagle, Julia M. Sicilia, Stuart Forman, Jeremy Fish, William Ellert, Roberta Gebhard, Barbara F. Kelly, John L. Pfenninger, Michael Tuggy, Wm. MacMillan Rodney, STFM Group on Hospital Medicine and Procedural Training

(Fam Med 2008;40(4):248-52.)

領域毎に,core procedures for family medicineとして
A,B,Cにランキング AをA0-A2に細分化 (table 1)

A:すべての家庭医療研修プログラムがこの領域の手技の研修を提供する必要がある
A0:このレベルは,すべてのレジデントが医学部修了,もしくはレジデンシーの途中で出来るようにならなければならない,研修の証明や数の記録は不要
A1:全てのレジデントがこのレベルの手技が卒業までには独立して出来るようにならなければならない
A2:全てのレジデントがこのレベルの手技にふれ,卒業までには独立して出来るようになるための研修する機会を得られる必要がある.(必ずしも出来るようにならなくても良い)
B:このレベルは家庭医療の範囲内であるが,独立して出来るようになるためには数多く,集中した研修をする必要が生じうるもの
C: このレベルは家庭医療の範囲内であるが,独立して出来るようになるためには3年を修了後追加の研修が必要になり得るもの

例えば皮膚であれば
A0 瞬間接着剤での裂傷の修復
A1 単純な裂傷の縫合
A2 電気メスの使用
B ボツリヌス毒素
C 該当なし
といった感じ
麻酔ならCに硬膜外が入る

全ての表は論文でみられるの参考に.

どのようにconsensusを形成したかの基準となるのが
table 2

1.患者にとってより利益があるか.家庭医が提供することでその手技へのアクセスが格段に良くなるか.救命に貢献するか
2.その手技を教えるのに十分な指導医がいるか
3.十分な数の家庭医が(修了後も)その手技を実施しているか
4.症例が十分にあるか
5.経済的に妥当か.診療報酬は適切か,導入に必要な初期コストが安価か

非常に納得.

我々のプログラムは早速これをたたき台にリストを作ることにしました(手技の達成確認はやらないと,と半年前からスタッフの間で話題になっていたので,良いきっかけとなりました)

記録,報告の方法(logging)についてはやはり今回参加したセッションを参考に

「そのときに出来ない記録は,後では出来ない」ということで,すぐに出来ることを優先.

REDI – Real-time Evaluation of Doctor’s Independence

このシステムを参考にとりあえず走り出してみることに.

最後に参考まで(特に総合診療の皆様へ).hospitalist movementに乗って,Society of Hospital Medicineがブースを出しており,そこで知ったのが,

The Core Competencies in Hospital Medicine

というリスト.オンラインでもみられます.

Section1: clinical conditions
Section2: Procedures
Section3: Healthcare systems
と分類されており,最後の所には

Care of the Elderly Patient 3.1
Care of Vulnerable Populations 3.2
Communication 3.3
Diagnostic Decision Making 3.4
Drug Safety, Pharmacoeconomics and Pharmacoepidemiology 3.5
Equitable Allocation of Resources 3.6
Evidence Based Medicine 3.7
Hospitalist as Consultant 3.8
Hospitalist as Teacher 3.9
Information Management 3.10
Leadership 3.11
Management Practices 3.12
Nutrition and the Hospitalized Patient 3.13
Palliative Care 3.14
Patient Education 3.15
Patient Handoff 3.16
Patient Safety 3.17
Practice Based Learning and Improvement 3.18
Prevention of Healthcare Associated Infections and Antimicrobial Resistance 3.19
Professionalism and Medical Ethics 3.20
Quality Improvement 3.21
Risk Management 3.22
Team Approach and Multidisciplinary Care 3.23
Transitions of Care 3.24

といった項目があるのが非常にバランスの取れたリストだな,と思いました.

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hospitalistの費用対効果

Outcomes of Care by Hospitalists, General Internists, and Family Physicians

Peter K. Lindenauer, M.D., Michael B. Rothberg, M.D., M.P.H., Penelope S. Pekow, Ph.D., Christopher Kenwood, B.S., Evan M. Benjamin, M.D., and Andrew D. Auerbach, M.D., M.P.H.

Volume 357:2589-2600 December 20, 2007 Number 25 NEJM

abstractのみですが。
18歳以上の45の病院、76926人の患者 2002/9から2005/6までに入院になった人(入院のcommon problem:肺炎、心不全、胸痛、虚血性脳梗塞、尿路感染症、COPD急性増悪、AMI)
284人のhospitalist、993名の一般内科医、971名の家庭医
後ろ向きコホート

結果
hospitalistと一般内科医の比較
入院期間 0.4日短縮 P<0.001
コスト削減 $268 P=0.02
有意差なし
院内死亡率 (odds ratio, 0.95; 95% confidence interval [CI], 0.85 to 1.05)
退院後14日再入院率 (odds ratio, 0.98; 95% CI, 0.91 to 1.05)

hospitalistと家庭医の比較
入院期間 0.4日短縮 P<0.001
有意差なし
費用 $125; P=0.33
院内死亡率(odds ratio, 0.95; 95% CI, 0.83 to 1.07)
退院後14日再入院率(odds ratio, 0.95; 95% CI, 0.87 to 1.04)

コメント

疾患ごとのquality indicatorについては調査されていないが、合併症が出たり、急性期治療の質が悪いと入院日数が長引いたり、再入院したりするだろうから、そこを見ればよいのでは、という考え。
sample calculationがされていないので、有意差のない物についてはβエラーの可能性。(それでも0.95とか0.98なので大差ではない。→臨床的に有意ではない)死亡率は4.1-4.5% 14日再入院率は6-7%
患者の平均70歳
対象患者の性質(併存症など)には最初から少し差はある(鬱や糖尿病は家庭医の患者に多い)
一人の医師あたりの1年あたりの担当入院患者数は家庭医、一般内科医、hospitalistの順に20人、30人、75人
平均入院日数は3日前後(これ以上効率化して短くしようがないような気がする。。)

0.4日程度の入院日数の差(半日程度)はhospitalistなら朝の採血結果やバイタルを見て午前中に患者さんに話しに行って、そこで退院を決めて、オーダーが書けるところが、一般内科医や家庭医は朝回診しない場合もあるので、午前中の外来が終わって昼休みや午後に病院に行って患者さんにあって、データ見て退院を決めて、それから指示。という程度の違いだろうと思う。

入院ごとの$100-$200ドル程度の違いであるが、一つの急性期病院にしてみれば大きな問題。単純に800床、360日として、平均3日として96000件の入院であるから額にすると、20億円超。hospitalistさらに数名余分に雇ったり、他のサービスに回せる。

評価されていないのは患者さんの満足度。この研究の通り医療の質(狭義での)が変わらないとして、入院中に主治医が変わることによる(日本ではよくあることだが)満足度の低下がどのぐらいあるか。1回入院あたり1-2万円余分に自己負担が増えても外来の主治医に入院中に診てもらいたいと考えるか。このあたりの研究が必要。

日本では、家庭医、内科医、hospitalistの定義をするところから始めないといけない。
家庭医はプライマリケア学会専門医か、家庭医療学会認定プログラム修了生
内科医は内科認定医(これでは広すぎるか?)
hospitalistは外来をやらない人
で出来るような気はするが。。。

そもそもhospitalistとしての研修というのはなく、一般内科や家庭医として研修を受けた人がlife styleとしてhospitalistを選ぶので(つまり同じ研修を受けるので)妥当な結果といえば妥当な結果。医師の質と言うより、午前中に退院指示が出せるかどうかだけの違いのような。。そうすると病棟張り付きの研修医がいればそれほど問題にならないが。。。。