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日本専門医機構の総合診療専門医の能力評価は極めて心配である

日本専門医機構によって開催された

総合診療領域「特任指導医講習会」
■令和元年度第6回
日時 令和2年2月9日(日)10:00~16:00
場所 TKPガーデンシティ博多
定員 203名
https://jmsb.or.jp/sogo3/#an01

に実際参加した参加者のSNSの書き込みを本人の許可を得て、要旨を抜粋する形で編集して以下にまとめます。

ーーー(以下引用)ーーーーーーーー

専門医機構は、評価を放棄したということですかね。。。?
これ、機構は、質の担保はしないということで認識しましたが。。。

自分で変わる能力さえあれば、いいらしい。
質問したけど、きっぱりと。
恐ろしい。。。

講習会のポートフォリオの説明では
タイプA:基準準拠方
タイプB:根拠創作型
というののどちらで提出してもいいとなっていて、これは最初に専攻医が選ぶらしいです(よくわからなかったけど)。
で、タイプAというのが、いわゆる私たちが今まで作ってきたポートフォリオですが、これの評価基準やどういうものを指すかは何も提示がなく(基準準拠型だけど基準はない)、タイプBというのを選んだ場合は、7つのコンピテンシーに対し、どうなりたいかという目標を専攻医に最初に作らせ、それがどうやってクリアできたかというレポートにするという事で、基準は施設ごと・専攻医ごとに全く別のものになるという事でした。
ポートフォリオは提出させるが、機構としては評価として用いない、試験の方法は決まっていないが、面接があればその提出したポートフォリオの事例について質疑応答があるかもしれないが、試験がそもそもどういう形で行うかいまだ決定しておらず、面接があるかも不明とのことです。

私の質問は
①基準準拠型だが、機構が基準を出さないのであれば、カリキュラムごと、地域ごとで基準が変わるということか
②専門医の質を担保するための専門医制度だったと思うが、総合診療専門医については地域ごとに基準が変わるという事なら、全国的に統一した質の担保を機構はしないという認識でいいか
③その場合、このカリキュラムで育った場合はこれができるがこれはできない、この地域のニーズはこういうことだから、この部分はできなくてもいいというような、地域や病院のニーズ中心に研修が偏ってしまうことになるのではないか
④タイプBに至っては、専攻医がこちらが思う最低ラインにも満たない基準を目標にしたとしてもよしとするのか
ということでしたが、
機構としては「自分で学び変わる能力という質を担保する」んだそうです。
地域が変わったら、その地域に合わせて対応できるように考えられればそれでいいということで、コンピテンシーの中身・研修終了時にそれが到達できたかは担保しないし、押し付けるものではないとのこと。ある意味到達していなくても、今後学ぶ姿勢がある人ならそのうち到達することなので、それでいいそうです。
仮に、こちらが思うように到達していなくても、学ぶ能力があれば、それ以後も生涯学習として学んでいけるから大丈夫なんであって、学べる人であること、3年間で自己学習ができたことを担保するそうです(これはきっぱり言われたので・・・)
同じ班の先生が、ぼそっと「成人学習は総合診療医じゃなくても、医師としての基本だろうに」と言われておりましたが・・・

「様々なステークホルダーが絡む」とか「特定の団体の基準と合致することがあってはならない」というお言葉はありました。
機構も大変なんでしょうが。。。

いや、「基準はぜひ、それぞれで作ってください」と言われたときの衝撃たるや😱
これ、1日の最後のコマだったんですが。
それまではまあ、面白かったし、これで指導医できる、とはならずとも、いろんな意見を聞いたり、ティーチングの復習にはいいなぁと思って参加していたのですが、最後の最後で一挙に混沌としました。
カオスすぎましたね。。。

ーーーー(引用ここまで)ーーーーーーー

特に

コンピテンシーの中身・研修終了時にそれが到達できたかは担保しないし、押し付けるものではないとのこと。ある意味到達していなくても、今後学ぶ姿勢がある人ならそのうち到達することなので、それでいいそうです。
仮に、こちらが思うように到達していなくても、学ぶ能力があれば、それ以後も生涯学習として学んでいけるから大丈夫なんであって、学べる人であること、3年間で自己学習ができたことを担保するそうです(これはきっぱり言われたので・・・)

のところ!!!!

以下に機構のウェブサイトから引用します。

基本理念
 一般社団法人日本専門医機構は、国民から信頼される専門的医療に熟達した医師を育成し、日本の医療の向上に貢献することを目指します。

行動目標
1.日本専門医機構は、国民が受診に際しわかりやすい専門医制度をつくります。
2.日本専門医機構は、専門医を目指す医師が誇りをもって医療に携われる制度を目指します。
3.日本専門医機構は、国民だれもが、標準的で安心できる医療を受けることのできる制度を目指します。

https://jmsb.or.jp/about/

理念とやっていることが見事に乖離しているのですが。。。。

学ぶ能力、生涯学び続ける能力が専門医に必要な能力として重要なことは認めますが、それが担保されれば、研修修了時の一定能力への到達は担保しない(つまり判定しない)で良い、ということにはならないと思うのですが。。

国民から「総合診療専門医はどのような医師ですか?(何ができる医師ですか?)」にどう応えるのでしょうか?(1.日本専門医機構は、国民が受診に際しわかりやすい専門医制度をつくります。)
研修によって何を標準的で安心できるものとするのでしょうか?(3.日本専門医機構は、国民だれもが、標準的で安心できる医療を受けることのできる制度を目指します。)
学ぶ能力さえあれば、何かに到達していなくても専門を差し上げます、で誇りを持って専門医と名乗れるのでしょうか?(2.日本専門医機構は、専門医を目指す医師が誇りをもって医療に携われる制度を目指します。)

アウトカム基盤型教育、という言葉を団体の皆様はご存知なのでしょうか。。。。
最初から理念なき団体だと思ってはおりましたが。。。

アメリカ見聞録(2年目研修医の目から見た米国の医学教育と家庭医療)

この原稿は1996年〜1997年初頭頃に書いた物で、結局没になったためにお蔵入りしていた物を基本的に変更せずにそのまま公開しています。
記載された内容,事実は当時の物で,当時医師2年目の立場の目で見た解釈が含まれています。

12ページ 原稿用紙40枚分と長いので、ご注意ください。
古さや青臭さが残っておりますが、今日でも有用な内容も含まれていると思いますので、あえて,原文のまま公開致します。
リンク切れや情報の間違い等についてはご容赦ください

改めて読んでの私の感想

  • 原稿用紙40枚分も書いている!
  • 結構的確に捉えている!けど生意気!
  • 今のアメリカで当時から何も変わっていない事もいっぱいある(進歩していない?)
  • 同じ事を日本でできる環境が結構整っている!

私の他の留学関係のちゃんとした執筆はこちら(これらも少し古くなっていますが)

アメリカ臨床留学への道―You can do it!
佐藤 隆美 , 中川 伸生 / 南山堂 (2005-11-10)

アメリカ臨床留学への道―You can do it!
佐藤 隆美, 中川 伸生
南山堂 ( 2005-11-10 )
ISBN: 9784525030032

(私の担当分は下記にupしてあります)

家庭医学・総合診療にみる医学留学へのパスポート (シリーズ日米医学交流)
日米医学医療交流財団 / はる書房 (2007-11)

米国で何を学んだか – 特集「海外臨床研修で受けたインパクト!」.JAMIC Journal. 2003; 23(12): 13-15 岡田 唯男.

FD 留学 (faculty development)