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肺がんスクリーニング推奨の改訂 (USPSTF 2013)

東京大学医学部附属病院 呼吸器外科 http://ctstokyo.umin.ne.jp/thoracic/ts_3/ より

あくまで素案の段階です!
正式な発表の時点で内容の変更がありえることに注意。

パブコメ段階なので8月末には一度アクセスできなくなりますが必読。
これが正式になるとかなり診療を変えなければなりません

英文、日本語斜体部分は抜粋。

肺がんのスクリーニング条件付きでB 推奨
USPSTF: Draft Recommendation
http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/draftrec.htm

AAFPの記事)USPSTF Gets Behind Screening for Lung Cancer
Annual Low-Dose CT Scans Now Recommended for High-Risk Adults
http://www.aafp.org/news-now/health-of-the-public/20130729uspstflungcancer.html?sf15522629=1

個人的な診療の変更
#喫煙者の全て、最近の禁煙者の全てにこの推奨が定義するハイリスク 群かどうかの評価を行いその旨を記載
#彼ら全員に年1回のLDCTを実施する訳ではなく、ただしCTを実施する閾値を低く持つ。(保険診療でないので)
#一部除外対象者は注意
ぐらいです。(こういう人たちはドックのオプションを積極的に奨めてよいと思います)

以下抜粋
もともとI statementだったんですね。Dだと思い違いをしていました。

Summary of Recommendation and Evidence
The U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF) recommends annual screening for lung cancer with low-dose computed tomography (LDCT) in persons at high risk for lung cancer based on age and smoking history.

推奨)ハイリスクグループに限り低線量CTによるスクリーニングを年1回推奨。

This is a Grade B recommendation.
B推奨の意味
The USPSTF recommends the service. There is high certainty that the net benefit is moderate or there is moderate certainty that the net benefit is moderate to substantial.
利益と害の差が中等度であることに強い確信がある or
利益と害の差が中途度から圧倒的であることに 中ぐらいの確信がある
のどちらかで

今回は中等度、中ぐらい
The USPSTF concludes with moderate certainty that annual screening for lung cancer with LDCT is of moderate net benefit in asymptomatic persons at high risk for lung cancer based on age, total cumulative exposure to tobacco smoke, and years since quitting.
年齢と、総タバコ暴露、禁煙後年数によってハイリスクとされた無症状者においてのLDCTによるスクリーニングの利益と害の差が中等度であることに中ぐらいの確信がある

肺がんのリスク因子は年齢とタバコ暴露蓄積量
目的は早期の非小細胞がん early-stage non-small cell lung cancer (NSCLC)
小細胞がんは対象としない

ハイリスクグループの定義
55歳から79歳の喫煙歴 1日1箱30年以上(30 pack-year or more)ブリンクマン指数では600以上。 かつ、禁煙後15年以上経過した人は除く
ただし、併存疾患が多いとか、対象年齢の上限近くの人(つまりよ御延長があまり期待されない人)は注意
見つかっても根治手術を受ける気のない人、NLST(下記)の観察期間(8年)いないに他の疾患で天命を迎えると思われる人はNLSTの研究対象から外されたことに注意

ここは日本の推奨と違うところ やるならLDCT! 単純+喀痰は検査としては不十分
Chest x-ray and sputum cytology have not been found to have adequate sensitivity or specificity as screening tests

今回の推奨の改訂に最も大きな影響を与えた研究
National Lung Screening Trial (NLST) ←知っているとかっこい!
この研究
5万人以上のこれまで最大のRCT。
対象患者、登録時点で55−74歳、最低30 pack-yearsの喫煙歴、禁煙後15年未満
(それ以外の研究では効果が証明されていないので中等度の確信)

Table 1は目を通して下さい。
様々なリスクグループの利益と害のバランスをシュミレーションしています。
対象患者を増やすほど不必要なX線暴露、偽陽性、不必要な侵襲的手技(害)が増える
なので、上記の条件で対象を絞ると、利益と害のバランスが許容できるバランスとなる。(害がなくなる訳ではない)
この条件では検診で見つかるがんの9.5% to 11.9%が過剰診断(診断しなくても、他の理由で死亡に至るために、診断の必要がなかったがん)となる。(米国の有病率での前提)
特に若年者では偽陽性率が上がるので、がんではないことを確認するための摘出術などの害も増える(その他放射線暴露、不安など)

The highlighted program—screening current or former smokers ages 55 to 79 years with a 30 pack-year or more smoking history and discontinuing screening (or not starting) after 15 years of smoking abstinence—which is the strategy that most closely resembles NLST patients, offers a reasonable balance of benefits and harms.

その他の前提条件としてはNLSTstudyの実施されたのが、
大規模な3次病院で、LDCTの読影の診断制度が高く、異常所見者の受診徹底(フォローアッププロトコール)、侵襲的手技(生検、根治術など)の実施基準が厳格で、明確という条件なので、それよりも緩い条件のシステムでの診療は、害が増えるかもしれない。

以下参考

診療報酬 現時点)
あくまで検診は保険を使わずに。
CT単純CT検査
撮影料 900点 (16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合)
画像診断料 450点
電子画像管理加算 120点
造影剤
点数 合計 1470点
3割負担の窓口支払額 4,410円

参考)
東京都がん検診センター
http://www.tokyo-cdc.jp/kenshin/teisenryou-ct/index.html
低線量CT肺がん検診

 現在、がん部位別死亡数の中で肺がんは第1位ですが、人口の高齢化が続くかぎり、肺がん罹患率や肺がん死亡率はさらに上昇すると予想されています。わが国では、2006年に厚生労働省研究班の調査報告を参考にして作成された「がん検診ガイドライン」において、『胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診併用による肺がん検診』については「死亡率減少効果を示す相応な証拠がある」とされ、対策型検診として推奨されています。しかしながら、『低線量CTによる肺がん検診』については「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分である」とされ、対策型検診として行うことは推奨されていません。そのため、全国の多くの自治体において『胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診併用による肺がん検診』が住民向けに行われているのが現状です。
2010年11月、アメリカ国立がん研究所が、2002年から開始した研究(National Lung Screening Test, NLST)の結果を受けて、『低線量CTによる肺がん検診』が肺がん死亡率の減少に効果があることを発表しました。さらに、2011年10月、同研究所は、2002年から開始した別の研究(The Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial:PLCOがんスクリーニング試験)の追跡調査の結果を解析し、年1回の定期的な『胸部X線検査』を受けても肺がん死亡率の低下が認められなかったと発表しました。
これらの発表は、わが国の「がん検診」に関する施策に大きな影響を及ぼすことが予想され、将来的に「がん検診ガイドライン」の見直しが行われ、自治体が住民向けに行う対策型検診として『低線量CTによる肺がん検診』が推奨される可能性が出てきました。とはいえ、実際に行われるようになるまでには、まだかなりの時間を要するものと考えられますので、当センターでは、個人で受けていただける『低線量CT肺がん検診』を開始することにいたしました。(2012年4月より開始)

参考)
低線量CT検診で発見された肺癌の25%は過剰診断?
イタリアで行われた後ろ向き研究の結果
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201212/528327.html
ハイリスク者を対象とした低線量CT(LDCT)による肺癌スクリーニングにおいて、検出される腫瘍の約25%が、体積倍加速度が遅く、結果として過剰診断となる可能性があることが、イタリアEuropean Institute of Oncology のGiulia Veronesi氏らによる後ろ向き研究で示された。論文は、Annals of Intern Medicine誌2012年12月4日号に掲載された。

診療の構造 (process of care) :TOPIC: Task-Oriented Processes in Care (TOPIC) Model in Ambulatory Care

診療の構造というのは、特に外来診療において(入院や救急、在宅でもそうだとは思いますが)、どのような手順で、どのような項目を外さずに、どういう構造で診療をすると抜け落ちなくうまくいくか、ということについて示されたモデルのことで、簡単には挨拶、本題、まとめ、という感じですが、その中がもっと細かくなっていることが多いです。
日本の医学教育に置いては、医療面接で簡単には教わることが多いですが、あまりにもgeneric、おおざっぱなもの(挨拶、本題、まとめ程度の)だけでそれ以外はあまり教わることはないように思います。海外に置いても、医師患者関係の構築の比重が他科より大きいプライマリ・ケア領域以外ではあまり教わることはないのではないでしょうか。ほとんどの方は独自の試行錯誤の中から自分の中で有効なモデルにたどり着いているといった状況でしょう。

診療の構造そのものではないですが、その中の鑑別診断、診断について考える、という部分では「鑑別診断の3C」(Common,Curable,Critical/「よくある疾患」,「確実に治療できる疾患」,そして,「重症疾患」)を考慮しましょう、というような思考モデルはよく知られていると思いますが、これは診療の構造という大きな枠組みの中の一部分の構造だけを抜き出したものです。

家庭医療の領域では
よく用いられる診療の構造としては
PCCM: patient – centered clinical method (M. Stwartら)
The Calgary – Cambridge approach
等がよく知られていますが、

下記では診療の構造という言葉ではなく、Consultation theory(診療/面接理論)という名前で、実に多くのモデルが提示されています。
http://www.gp-training.net/training/communication_skills/consultation/consultation_theory.htm

さて、友人のポストで、やはりジェネラリストの教育において診療の構造 (process of care)の議論が重要な肝になるだろうという話で、公開思索を続けておられました。前述のように、様々なモデルが提案されていますが、TOPIC: Task-Oriented Processes in Care (TOPIC) Model in Ambulatory Care と呼ばれる、診療の種類ごとに、構造を分類し、それを下世話ではあるが、taskに小分けして、学生の教育に生かす、学生も診療のタイプごとにやることが明確化され、指導者の側も確認事項の抜け落ちが少なくなる、というモデルが提唱されています。
診療の構造だけではなく、指導の構造もいくつかモデルが提唱されて (five microskills (http://ja.scribd.com/doc/17490374/OMPone-pager) , GRIPEモデルなど)いますが、このTOPICモデルは、
1. 診療の構造の提示=指導の構造の提示ということで、臨床家や学習者(直接患者を診療する人)と指導者が同じモデルで診療の抜け落ちない完結と指導の抜け落ちない完結を達成しよう、としているところ
2. 診療のタイプ分類を行ないそれぞれに異なるタスク設定をしているところ(これはTOPIC独占ではありませんが)

が一つの新規性ではないかと思われ、これまでも個人的にはいろいろな人に紹介してきましたが、備忘録もかねてこちらにまとめておきます。

2の、診療をいくつかの種類に分類するという試みは他でもなされており、Millerのclinical hand

Miller WL. The Clinical Hand: A curricular map for relationship-centered care.Fam Med. 2004 May;36(5):330-5.
http://www.stfm.org/fmhub/fm2004/May/William330.pdf
では、
routine, ceremony, dramaという3分類がなされていますが、これはそれまでに行なわれた下記の質的研究の結果に基づく分類です。
Miller WL. Routine, ceremony, or drama: an exploratory field study of the primary care clinical encounter. J Fam Pract. 1992 Mar;34(3):289-96.

さておき、このTOPICモデルでは診療の種類が5種類に分類されており、

New Problem Visits (新しい問題)
Checkup Visits   (健診)
Chronic Illness Visits (慢性疾患)
Psychosocial Visits  (精神社会系の受診:メンタルヘルス、ストレス、介護、心配事など)
Behavioral Change Visits (行動変容の受診:禁煙、運動など)

上記度の診療タイプに置いても下記の4つのカテゴリーでなすべきタスクをこなす(それぞれのカテゴリー内部でやるべきことは上記の診療の種類によって変わる)ことを考える(真ん中の2つはあまりタイプごとによる差はありませんが)という仕組みです。

Information Processing
Patient-Physician Relationship Development
Integration of Information And Relationship
Life-Long Learning

俯瞰的にわかりやすいのはこちら
https://www.bcm.edu/familymed/index.cfm?pmid=8283

それぞれの指導の様子のビデオや使えるフォーマット(ワークシート)などのCDがついた書籍が出版されており、
Task-Oriented Processes in Care (TOPIC) Model in Ambulatory Care (Springer Series on Medical Education)
http://mediamarker.net/u/familydoc/?asin=0826124259

このモデルを利用しての効果は一応検証されております。

Rogers J et al. Task-oriented processes in care (TOPIC): a proven model for teaching ambulatory care. Fam Med. 2003 May;35(5):337-42.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12772935

ご参考になれば。
Rogers J, Corboy J, Huang W, Monteiro F. Task-Oriented Processes In Care (TOPIC) Model For Ambulatory Care. MedEdPORTAL; 2006. Available from: http://www.mededportal.org/publication/306

書評 http://www.stfm.org/fmhub/fm2005/May/Scott369.pdf

COI(利益相反):ありません。