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Twitter, Facebookそしてプロフェッショナリズム

漸く日本にもfacebookやtwitterの波が押し寄せて来つつあります.diffusion of innovation theoryから行くとearly adopter/early majorityのステージでしょうか.

twitterはmicrobloggingとよばれるぐらいですので,blogやHPと何が違うの?と思うかもしれませんが,
いわゆる「有名人」のひとたちや,これまで質の高いblogを書くので注目していた人たちをtwitterでフォローするようになり大変ショックだったことがあります.

公式のblogやHPで書かれている記事やそこで投影されるそのひとのイメージとtwitterから流れてくるメッセージとが全く違うのです.

仕事柄,仕事術についてのexpert,guruと呼ばれる人達,これまでblogや書籍などであこがれを持っていた人達のことが多いのですが,その人達がtwitterでは赤裸々に「午前様だった」「締め切り超過○日」「xxxのマウスがよい」「食事に○○を食べた」といった内容を投稿(写真まで)しています.

「あの人達のようになりたいが,自分には無理だろう」と思っていた人達が意外と自分と同じようにジレンマや悩みを抱えており,失敗もするということが分かった時点で,ある意味,やっぱり同じ人間なんだ,とホッとする部分もある一方で,それまでblogやHP,書籍から持っていたそのひとに対するイメージ(もちろん自分が勝手に作ったイメージなのですが,戦略的にそのようにイメージ作りもしているはずです)がガラガラと崩れてしまう.

清純派のアイドルだった人が覚醒剤でつかまった時のような.

そこへタイムリーなarticle

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Sachin H. Jain, M.D., M.B.A. BECOMING A PHYSICIAN:Practicing Medicine in the Age of Facebook. NEJM. Volume 361:649-651 August 13, 2009 Number 7

医学生として出産に立ち会った妊婦さんからFacebookで友達のリクエスト,一旦了解し,取り上げた赤ちゃんの成長を写真と共に定期的にみることが出来るようになるが,はたと「本当に良いのだろうか?」とたちどまる.

仕事場で経験した困難な患者について書いている看護師の例
あとから皮膚科のレジデントが独身であることをしってアプローチしてきた外来患者
パーティーでへべれけになっている写真を載せて信用を落としたアテンディング

等の例が挙げられる

米国の一部医学部では既に学生へその使用と載せる内容について注意を喚起...
「自分のキャリアに悪影響を与えかねない」と.
もちろん研修病院側は応募してきた候補者についての情報源としてtwitterやfacebookも有効活用することになる..

最初の患者さんはその後,「実は医学部へ行きたい」という相談を持ちかけてきて,著者は安堵と共にアドバイスを少しし始める.「SNSに載せる内容には注意して」と沿えて.

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現在流行の始まりやマーケティングのチャンネルとしてtwitterやfacebookなどのSNSが重要視されていますが,そこでどのような口コミが拡がっているのかに関して,効果的に検索をする方法がまだ試行錯誤レベルで,大手ネット検索事業者はその一番乗りを目指しています.

Googleの次世代検索エンジンはそれに対応する事を目標として開発されているはずです.
関連記事
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/08/12/017/?rt=na
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/11/news036.html

ネットでの暴露の多い人でtwitterやfacebookをやっていると分かっている人の検索を現在のgoogleと新しいものとで比べてみると,違いが分かります.次世代エンジンだとそのひとのtwitterやfacebookが引っかかってきます.

これまで,検索に引っかからないことから「そっと」つぶやく事が出来るために「本当の顔」を覗かせてきたハズが,それも全て検索に引っかかるようになってきています.そうするとこれまで書籍やHPで一生懸命に作ってきたイメージ戦略にも悪影響が出ます.

僻地での医療は医師の公私がなくなってしまう.買い物をしていても,泳いでいても,誰かしらに見られている,そしてそれは殆どが自分の患者さん.ということでglass wall(自分の生活が全部筒抜けになってしまうことから透明な硝子の壁で出来た家で生活をするような感じを例えて)と言われてきました.

そして,そのことを敬遠するために,僻地で医療を行うことをためらう人も多いのです.

しかし,ネットで自らのプライベートを公開するとそれは誰からもアクセス可能になり,例え都会に住んでいても,ネット上では「glass wall」の中での生活をしているような物です.

さっき診察した患者さんは言わないだけであなたのtwitterやfacebookでの投稿を知っているかもしれないのです.

本当は人間らしくおこったり,泣いたり,失敗もしたりするのだけれど,自分のアイドルとしていて欲しいから,そういう部分は見せて欲しくないと自分が歌手やアーティスト,スポーツ選手に求めるように,患者さんは同じ事を医師に求めているかもしれません.

「輝き続けている(様に見せること)」これも医師の重要な役割なのです.特に指導医は.

一方で,そういった隣人的な日常性がみえることで,かえって親近感を持ってもらえることもあります.
特に患者さんと同じ地域に住んで,相手の生活を知らないと仕事にならない家庭医としては,その為に自分のプライベートも少し開示しないとうまくいかない.

どこまで,どれだけ,どこで見せるか.これはとっても難しい問題ですが,意識しながらネット上でも,リアルライフでも活動をするしかないのでしょう.

>会議の費用

>仕事柄「会議法」についてのWSを行なうこともあるのだが、改めて会議にかかるコストについての記述に出会ったので、現在の組織について適応してみる。
後期研修医の時給は大ざっぱに計算して2500円ぐらい。(本当に大ざっぱに)
スタッフ3人+後期研修医12名のうち3分の2が出席として全員で11名
スタッフの時給も同じとして(本当はもう少し高いが)、
1時間の会議で27500円
週1回の実施なので、月4回で11万円
1年間50回で137万5千円
の人件費を会議をすることに費やしている。

1回1時間当たり3万円の価値のある会議をしているか?
何でも効率、コストというせち辛い世の中であるが、利益を無視して本当にやりたいことをやるための人と時間を確保するためには、出来るだけ短時間で最低限必要な利益を生み出すことを考えなければならない。
極論をすると月25日のうちの最初の10日で最低限必要な売り上げ(損益分岐)が出ればあとの15日は本当にやりたい医療や社会貢献、新しいことへの取り組みなどに使える。

演奏家は自分の出したい音程や音色を出すために指の位置はこうで、構えかたはこうで、力のかけ具合がこうで、といったことを考えながらやっているようでは、本当に表現したいこと、伝えたいことにエネルギーが注げないの。だから何も考えなくても自動的に求める音程や音色が出るようになるまで(楽器が体の一部になるまで)基本的な練習を積む。
プロとして正確な音程や温色は大前提であって、勝負はその先ですること。

原始仏教の教徒は永遠の精神(肉体に束縛されない自由な精神)を得るために徹底的に肉体を鍛えた。

のどが痛いといってきた人の問診項目はこれで、診察のポイントはここで、鑑別診断は。。
コレステロールが高いと検診で言われてきた人にまず聞くことは、、、この人のLDLの目標値は、選択するべき薬剤は?
といったことに意識がいっている間は、自分が医療を通じて患者さんに伝えたいことを伝える時間はない。患者さんに「どんな人生を送りたいの?」といった本質的な対話を持つ時間はない。
自分が本当に患者さんと交わしたい対話に十分な時間をとるために、絶対にやっておかなければならないこと(正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療など)を徹底的に体に覚え込ませる。またシステムとして保障する。
プロとして、正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療などは大前提であって、勝負はその先ですること。

急がば回れというが、よりレベルの高いこと、本質的なこと、自分のやりたいことに取り組むために、好むと好まざるとに関わらずやらなければならない基本的なこと、必ずクリアしなければならない事、の効率を最大限にする、という逆説的なことになるが、これが物事の本質だと思う。

大きな木ほどその根(見えない部分)は深い、水上は優雅な白鳥も水面下ではたくさん水をかいている、大きな建物ほどその基礎(土台が重要)、すそ野が広いほど山は高い。

奇抜なピカソも青の時代までは基本的なデッサンをしっかりやった。

優秀なプレイヤー(演奏家も、アスリートも)ほど基礎練習、原理原則論に忠実である。

医が算術になって久しい、といわれるが、医が本当に仁術であるためにまず算術でなければならない、というのが現実的な所。上記の理由からこれは全く恥ずるべきことではないと思う。問題なのは、算術の段階で止まってしまっていることなのだ。意図的に算術だけで済ませてしまうのは論外としても、経営的にランニングコストを出すのに精いっぱいの医療機関では、そこを達成するために不必要な検査や処方を出さざるを得ず、医療がゆがむ。仁術をやる余裕がないのだ。そしてそれはそこで働く医師の本意ではないだろう。

効率的に会議を行なう事が目的ではなく、それによって生まれた時間と人で何かをするために効率的に会議を行なう事が必要なのだ。

急がば回れ。

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